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ご存じでしたか? ハザードマップに書かれていない「空白地帯」

2022.06.15



近年、大規模な水災害が毎年のように発生し、甚大な被害をもたらしています。
首都圏を含む東日本を襲った、2019年の東日本台風(令和元年台風第19号)は、まだ記憶に新しい出来事です。この台風では、水害による被害額が、2018年の西日本豪雨を上回り、統計開始以来最大となる約1兆8800億円に上りました。

こうした水災害の頻発が契機となって、2020年7月に宅地建物取引業法施行規則が改正され、不動産取引時の重要事項説明の対象項目に「水害リスク」が追加されました。不動産購入者に水害リスクを周知徹底させることがねらいです。

  1. 不動産会社の水害リスクの説明が義務化。水害ハザードマップを提示
  2. 衝撃の事実 水害ハザードマップは全地域をカバーしていない
  3. 朗報 法改正により「洪水浸水想定区域」が拡大
  4. 「空白地帯」の水害リスクを回避するには?

1.不動産会社の水害リスクの説明が義務化。水害ハザードマップを提示

具体的にどうなったかといいますと、不動産を購入する際の契約にあたって、取引対象となる不動産物件が「水害ハザードマップ」上のどの位置に所在するかを説明することが不動産会社に義務づけられました。

「水害ハザードマップ」とは、国または都道府県知事が指定・公表した「洪水浸水想定区域」に基づいて、自治体が避難場所や避難ルートなどを記した地図をいいます。水害ハザードマップには、「洪水(外水)」、「雨水出水(内水:雨水を排水できずに発生する出水)」、「高潮」の3つのハザードマップがあります。

水害リスク説明の義務化により、不動産購入の契約前に、水害ハザードマップが買主に必ず提示されることになり、買主が水害リスクを知らずに不動産を購入するケースはなくなります。

2.衝撃の事実 水害ハザードマップは全地域をカバーしていない

しかし、日本全国には、河川氾濫の恐れがある「洪水浸水想定区域」の指定が求められていない都道府県管理の中小河川が、約1万9000も存在しています。これらの河川の中には、水害のリスクがあるにもかかわらず、水害ハザードマップに反映されていないものがあります。
実際、2019年10月に発生した台風19号による水害では、決壊した都道府県管理の河川(全国67河川)のうち43河川が、水害ハザードマップに記載されていない河川でした。

このように、水害ハザードマップは、浸水するリスクのある地域をすべて網羅しているわけではありません。水害ハザードマップに反映されていない「空白地帯」が全国に存在します。この空白地帯は、「水害リスクのない安全な地域」という意味ではないことに留意する必要があります。

3.朗報 法改正により「洪水浸水想定区域」が拡大

国土交通省は、近年の激甚化する自然災害への対応を迫られるなか、水害リスクの「空白地帯」の解消に乗り出しました。
2021年5月の水防法※の改正により、「洪水浸水想定区域」の指定対象ではなかった中小河川の同区域への追加が、河川の管理主体である市町村に義務づけられ、水害リスクの「空白地帯」の解消を目指すことになりました。

この法改正により、付近に住宅があるすべての河川流域について水害ハザードマップに記載されるようになります。しかし、中小河川の水害リスクが反映された水害ハザードマップが完成するまでには時間がかかる可能性があります。この場合、水害リスクがあったとしても付近住民は分からないまま、という状態がしばらく続くでしょう。空白地帯は徐々に減っていくものの、依然として存在はします。

※洪水や内水氾濫、高潮、津波などの水災害による被害を防止・軽減するための枠組みを定めた法律

4.「空白地帯」の水害リスクを回避するには?



水害に対する安全度は、堤防の高さではなく、地形で決まります。氾濫した水がどこに集まるのかが重要になります。
不動産の購入を検討している方は、物件が水害ハザードマップで浸水する可能性のあるエリアに所在していなくても、物件周辺がどのよう地形であるかという確認が必要となります。
では、氾濫水が集まりやすい場所とは、どのような地形となっている場所なのでしょうか。以下に例を示します[滋賀県が公表している資料「開発行為に関する技術基準について」を参照]。

<氾濫水が集まりやすい場所の例>

  1. 鉄道や道路などの連続盛り土が河川を分断している箇所の上流部
  2. 河川の両側に山が迫って狭窄(きょうさく)部になっている場所
  3. 河川の合流部付近
  4. 付近に川が流れる、干拓地などの低平地

こうした場所では、地形上、半永久的に水害リスクが残ります。

特に中小河川では、急激な水位上昇が発生します。このため、水害ハザードマップに記載されていような中小河川であっても、川があふれると、上に挙げたような場所に洪水をもたらす恐れがあることにも留意する必要があります。

また、物件のある都道府県や市町村が発行する歴史資料、防災関係機関のホームページや資料などで、過去の水害情報を収集したり、役所で、物件周辺に浸水履歴があるかどうかを確認したりしておくのもよいでしょう。
このほかに、その地域に代々住んでいる地元の方から、過去の水害などについて聞き込みをするのもよいかもしれません。

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